16人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「これは?」
「忘却……とでも名付けましょうか……」
「面白い名前のカクテルですね……」
「ま、誰にでも失敗はある事です……。と、言ってしまうのは簡単ですが……」
「だけど、現実はそうじゃない……」
「確かに……。ですが、毎日の生活の方が大事です……」
「ま‥‥、そうでしょうけどね……」
男は、しばらくカクテルを見詰めていた。
マスターも、その男を見詰めていた。
男は、意を決したように、
「だいたい僕の人生は、子供の頃に両親が自殺してから、狂ってしまったんですよ‥‥」
「そうでしたか‥‥」
「叔母夫婦に引き取られたんだけど、元々子供が四人いたから酷い扱いを受けましてね‥‥。
だから、たまらず中学生になった時に、家出した‥‥。
それから色んな事をしたんですよ‥‥」
「大変でしたね‥‥」
「あーあ‥‥もしあの頃‥‥子供の頃に戻れて、両親の自殺を止められたらな‥‥なーんてね‥‥。
その時、僕は小学生で、学校にいたから、絶対に無理だった‥‥」
「‥‥」
男は、グラスに入ったグリーンの酒を飲み干した。
最初のコメントを投稿しよう!