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男が目を開けると、そこは、男が子供の頃に住んでいた実家の自室だった。
「わーお! 本当に戻ったんだ‥‥。あのマスター、何者だ?」
金曜日の正午前だった。
不気味にシーンとしていた。
「誰もいないのかな‥‥?」
少年に少年に戻った男は、階段を下りていった。
階段の途中から見えるリビングで、両親は何かの準備を黙々としていた。
やがて、少年の目に入ったのは、リビングの奥で天井から下がったロープの輪っかだった。
やがて両親は、その輪っかに首を通しにかかった。
少年は思わず駆けながら、
「パパ、ママ、自殺なんか止めてよー!!」
両親は呆然として、輪っかから離れ、
「あら、一郎‥‥」
「おまえ、なんで今頃、家に‥‥?」
「そんなことより、自殺なんか止めてよ!」
母親は息子を抱き、泣きながら、
「ごめんね一郎‥‥」
父は、しょんぼりと息子を見詰め、
「私が悪いんだ‥‥」
「あなた、どうします?」
「仕方ないよ。もう一度、頑張ってみるしか‥‥」
両親は息子に自殺しないことを明言した。
それを聞いて、少年は笑顔になった。
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