第12話:水魔龍討伐

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第12話:水魔龍討伐

「って、悠長に話している場合じゃないね。エル、来るよ!」 「……では、このサタンの力を試させていただこうかな」  森の奥から息を潜めていた魔物が茂みから現れ、一斉に攻め込んできた。魔物達を見て、エルフィンは剣を構え、漆黒の瞳をカッと見開た。 「我が名はエルフィン、悪魔の血を引く者。汝、サタンに告ぐ。我に今、怒りの鉄鎚を下す力を与えよ! インディグノル!」  エルフィンは唱えると、剣を横に大きくひと振りした。ブォンと鈍い音がしたかと思えば、時が止まったように静寂となり、次の瞬間、疾風のごとく、木々は切り倒され、魔物達も吹き飛ぶように倒れていった。エルフィンは翼を羽ばたかせ、魔物を追い回す。森にはエルフィンの高笑いが響き渡る。 「ここまで一掃してしまうとは……言葉が出ません」 「グラント様、これからです」  地響きとともに、湖底から3つの首を持つ水魔龍が唸りを上げながら現れた。 「グラント様、申し訳ないのですが、スカジを召喚させて、凍らせてもらえますか?」 「ああ、いいとも。……我が名はグラント! 汝、氷の女王スカジに命ず。今、凍てつく矢で奴を射貫きたまえ!」  グラントは召喚陣を発動させ、青白い光とともに雪の結晶を舞い降らせながら、氷の衣を身に纏った巨人の美女スカジが現れた。スカジは水魔龍に向かって、弓を引いた。氷で出来た弓矢は飛んでいる最中に無数の矢に分裂し、氷矢の雨を降らせた。 「エル、私に力を貸して!」 「ああ、分かった。……インディグノル・ブースト!」  悠人はエルフィンから能力を継承し、赤黒いオーラを放ちながら、凍った水魔龍に近付いた。そして、悠人は手を挙げて、詠唱をし始めると、審判の剣は空高く上がり、無数の剣に分裂した。空は剣で埋め尽くされた。 「……我が名は悠人。我、ここに来たれし者達に善悪の秤を持ちて根絶す! ユーディキウム!」  詠唱後、挙げてた手を勢いよく下げると、剣が一斉に目標へ向かって、風を裂く音を響かせながら、目にも止まらぬ速さで残りの魔物達や水魔龍もろとも串刺しにした。悠人は指を鳴らすと、水魔龍は粉々に砕け散って、消えていった。  そして、瘴気は消え、森は澄みきった風と小鳥がさえずる声が聞こえ始めた。湖も太陽の光で水面がキラキラと光り、穏やかで透き通っていた。  エルフィンは剣から滴る血を振り落とし、鞘に納めた。悠人は力が抜け、よろけそうになり、それを見たエルフィンは悠人を抱きかかえて、皆の元へ戻った。 「エル、ごめんね。ちょっと頑張り過ぎちゃった……えへへっ」 「見事な剣術魔法だったぞ。グラントとも連携が取れていて、とても良かった。セレストも皆を守ってくれて、ありがとう」 「とりあえずエルは翼を仕舞って、いつもの体にならないと。ほら、僕とキスして」  エルフィンは皆がいる前で、悠人と舌を絡ませながらキスをした。そうすると、エルフィンは青の騎士団長エルフィンの姿に戻った。 「……悠人様、キ、キス以外で元に戻る方法はないのですか? 毎回、それを見せつけられる私達の身にもなってくださいよ」  兵士達はエルフィンと悠人の淫猥なキスに見惚れており、それを見たグラントは呆れ顔で悠人に言う。 「うーん、……ないね! だって、またあの儀式するの嫌なんだもん」 「……まぁ、確かにそうですけど……はぁ」  グラントは頭を抱え、深くため息をつく。そんなグラントを見て、悠人は近寄り、耳元で囁く。 「もしかしたら、グラント様ともキス……以上の事があるかもですよ」  グラントは顔を真っ赤にし、悠人に大慌てで離れ、目を背け、腕で顔を覆った。 「とりあえず、今日はここで野宿だ。翌日、結界を張る事にしよう」 「はっ!」  エルフィンの命で兵士達はテントの設営などの作業に追われた。悠人は先に出来たエルフィンと悠人のテントで少し休み、着替えて、料理を手伝いに合流した。 「悠人様! その恰好、どうされたんですか!」 「え、メイドの人達が必要だからって渡されてさ。メイド服は着た事無いし、折角だしと思ったんだけど、やっぱ、似合わないかな……」 「いえ! お似合いなんですけど……そのメイド服……」 (悠人様、屈んだら襟の隙間からピンク色のアレが……見えてます! ああ、後ろも屈んだら、ひ、ひ、ひ、紐パンが見えてます! ああ、もうまともに飯作れねぇ!)  料理を作っている兵士達は目のやり処がなく、頬を赤くし、困惑した。 「飯盒炊飯とか懐かしい。どれどれ、ご飯の火加減はどうかなぁ」 「あぁ! 悠人様、そこで屈んだらぁ!」 「ん? 火加減大丈夫そうだよ? 何、どうしたの?」  さっきまで騒がしく作業を行っていた音や話し声が一気に静まり返った。忠告した兵士達は頭を抱えていた。振り向くと、皆が口をポカンと開けて、メイド服姿の悠人を見ていた。エルフィンは深いため息をつき、悠人に言った。 「……悠人、その、なんだ。見えているぞ」 「えっ?」  エルフィンがお尻を見る様に指を指し、悠人はその屈んだ体勢のまま触ると、布の感触ではなく、下着とお尻の感触しか無かった。 (うわっ、これ、もろ丸出しだし、しかも、よりによって、パンツ食い込んでるし! めっちゃ恥ずかしい!) 「き、き、着替えてきます!」
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