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車内は薄暗く、人影はまばらだった。くたびれたジーンズとパーカーに身を包んだ安芸(あき)浩介は、シートに座りながら、刺すような隙間風に思わず身を縮こまらせた。
浩介は、都心から少し外れたアパートで一人暮らしをしている。家族や身寄りはいない。小さいときは母親と暮らしていたようなのだが、浩介が六歳のとき、母親は浩介を置いて出ていった、らしい。餓死寸前のところを近所の人が見つけ、養護施設に引き取られた。以来、ずっとそこで育った。
施設は十八歳になった年の翌年、出なければいけない決まりだった。だが進学はできず、就職もうまくいかなかった。やむを得ず、今はアルバイトのかけ持ちで生計を立てている。
せめて、何か目的を持って生きていたいと思うのだが、見つからない。その日を暮らすだけで精一杯の毎日を送っていた。
今は宅配会社の倉庫で作業を終えて、終電で帰るところだ。こうやって陰鬱な夜の電車に揺られていると、どうしようもなく寂しい気持ちになってしまう。
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