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7話 再生100回
水際で打ち上がった。あの音がまだ耳に残っている。そうだよ。俺はもう川で死んでるんだよ。仏壇が置かれた俺の部屋。ここから一歩も動けない。母さんは俺を死なせたのは自分のせいだと嘆いて、心の整理がつくまで俺の部屋に入らなくなった。
徐々に捨てられていく俺の私物。マンガだけじゃなかったんだな。だけど、俺のTシャツや学ランなんかを捨てるときは涙ぐんでいた。捨てられたとは思わないよ。必要がなくなっただけだ。形見として持っていてほしいとも思わない。
今日は俺が死んでから七日目か。
「サミ。俺は、大変なことしちゃったんだな」
「七日がまたやってくるの」
「四十九日か、すぐに成仏させてくれたらいいのになあ」
「裁きがあるらしいけど、本当化は知らない。だけど、この七日を七回繰り返す間に何かできることがあるんじゃないかと思って」
「……待ってくれよ、サミ。君はじゃあ、声を失ってるんじゃなくて。この世にもう……いないのか」
俺はとんだ勘違い野郎だ。それに、再生回数を稼いでサミを救えるなんて馬鹿げてた。彼女ももう、この世にいないのなら俺にできることって。
「でも、君が動画を見つけてくれて嬉しい。一人で四十九日過ごすの……怖かったから」
「ほんとか?」
「死んでるのに嘘ついても良いことないじゃない」
「確かにな」
俺は苦笑する。
「なぁ、ずっと聞いていいか? 俺、どうせ死んでるんだ。だったら、今からでも誰か一人、笑ってもらいたい」
「四十九日の歌なのに? 縁起悪いかもしれないよ?」
「今更かよ。いいよ。今こうして、君と話せただけで俺、嬉しいんだ。それに、これからは君の涙の理由も分かった上で聴き込める」
俺は回転椅子の上で三角座りをやめて、居住まいを正す。
サミは歌ってくれた。俺のために。何度聞いても飽きなかった。
再生回数100。俺たちの四十九日目。はじめから誰もいない部屋で、電源のつけっぱなしのパソコンがファンの静音を響かせている。パソコンがスリープしたのを見届けて俺はどこかに旅立つ。目的はなかったけれど、夢もなかったけれど、俺はたった一人を救えたかもしれない。
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