3話 学校に行く意味がない

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3話 学校に行く意味がない

 サミについても調べてみた。ミュージックビデオというからには、有名な歌い手? プロの歌手? レーベルに所属していないのだろうか。  再生回数は俺のおかげで20にまで増えた。だけど、再生回数20の初心者同然の音楽動画がプロであるはずがない。他の曲はないのか?   「サミ」という名前だけじゃ特定できない。Twitterのエロい人とか、キャバクラ嬢、普通の女子高生から幼稚園児まで出てくる。検索の海は越えられそうにないな。  この子は何故音を流さない? 見ていると痺れを感じる。喉が張り裂けそうに見える箇所があり、そこがたまらなく好きだ。この子の喉に負荷がかかって苦しんでいる。そんな妄想をすると俺はいたたまれなくなる。じっとしていられない。 「この子を救えるのは俺だけだ。俺にしかできない」  再生回数21。この子は、自分だけの歌姫。ただ、大きく口を開けて涙ぐむだけの。  何で俺は一日中、部屋の中にいるのかって?  声のない彼女に答える。 「もう、学校に行く意味がないから」  先生に机を蹴られた。体罰ではないけれど、ギリギリアウトだと思う。俺は生真面目すぎて反論できなかった。授業もちゃんと聞いていた、それでも応えられなかった。直前まで聞いていた出来事が頭から砂が溢れるように抜け落ちてしまった。  正解が分かっているのに、答えることができない。隣の席の男子が鼻で笑う。後ろの席の女子が俺を冷やかす。嘲笑が波紋してクラスの半分が敵に見える。  解答は喉の奥に沈んだまま出てこなかった。  そんな俺は音楽の授業でも痛い目にあった。声が出ない。本番になると歌えないんだ。家で口ずさむことはできる。今流行の高い声は出せない。古ぼけた声質。残念だけどジャニーズ事務所には入れそうにないよ、サミ。  サミ、もしかして君も声が出ないのか?
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