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「フェロモンってやつ? 希望はそういうの感じるタイプなんだー」
美樹さんに言われたことが気になって、もう一度思い返してみた。
この前の週末、いつものように美樹さんの部屋で過ごしていた。ソファに座っているアタシの横に座った美樹さんを抱きしめた時、美樹さんからいい匂いがふわっとした。
シャンプーでもない、柔軟剤でもないそのいい匂いがアタシは好きだ。
「んー、美樹さん……好き」ずっとその匂いを感じていたくて、しばらく美樹さんの首筋に顔を埋める。
「実は、今まで付き合ってた人……元カノもね……いい匂いだったんだ」
アタシが変なことを言っちゃったから、美樹さんに問いただされて、過去の恋愛話をしてしまった。とにかくアタシが最初に好きになるのは、その人の匂いだ。
アタシが付き合った人は、美樹さんを入れて3人。3人とも全然違う匂いだったけど、どの匂いもアタシを変な気分にさせる、側にいると何故かゾクゾクしてしまうような、何か狂わせるような感じだった。
本当に平静を保つのに苦労した。
最初に付き合った人は、同じ中学のバスケ部の同級生だった。同じクラスになったこともあるし、一人だけ独特の匂いを放っていたのでアタシも気にはなっていたんだけど、中学生で付き合うの意味もよくわかってなかったし、女同士だからきっと一時の気の迷いだろうと、気持ちを封印していた。
ところが、中学の卒業式の日にその子から告白された。ずっと好きだったって、アタシの気持ちを代弁してくれたのかと思ったよ。
それでOKして、1、2年付き合ったのかな。
アタシはバスケの強豪校に進学した。徐々に彼女よりも練習の方に比重を置くようになって、自然と彼女に会う回数も少なくなった。そしたら、いつの間にかその彼女に彼氏が出来ててね。それでさよならしたんだけどさ。
最初の頃はラブラブで、キスしたり、もちろんその先もした。恋人と体を重ねた経験が二人ともなかったから、わからないなりに探り探りでやってた。
そうやって愛し合ってたから、お互いにどこを触れたら感じるか把握しているほどだった。
「たぶん、その練習相手だったんでしょうね、アタシ……」彼女はたぶん、もともと男の人が好きだったんだろう。誰かと付き合った時に、いずれ来るであろうその日の為に、アタシは練習台になったのだ。
その話を聞いた美樹さんは、その彼女に怒ってた。悪い女だって。
もう元カノの話は良いかなと思って終わらせようとしたら、美樹さんはまだ聞きたがった。意地悪な顔してる。
まあ、美樹さんには逆らえないから、話を続けた。
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