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周平が、話がだいぶ違う方向に脱線しかけていることに気がついて、話を戻した。
「……それで麻里は、両親には絶対秘密だと言って、自分には生まれた時から前世の記憶があるって言ったんだ。でも変に思われたくなくて、4歳児らしく振る舞っていたんだって」
「パソコンを使っていたのは、前世の自分のことを調べたかったからだったんだ。——その少し前に、家族でプールに行ったんだけど、麻里は水に浸かるのをひどく怖がってしまって。前世で池で溺れて亡くなったことを、プールで思いだしたらしい」
「それ以来、麻里はパニック障害でプールとか、海とかダメになっちゃったんだ。今では、パニック障害が出るのが恐くて、……湯船にも入れなくなって。——なんて、可哀想なんだっ……!!」
「使ってくれ」
くっと眉間をおさえて嘆く周平に、相馬がティッシュを差し出すと、「ありがとう!」といって周平がぶーん、と鼻を噛む。
相馬が瀬野の方を向いて、注釈を加える。
「パニック障害というのは、本人が不安を感じる状況で、動悸、呼吸困難、めまいなどの発作を繰り返すものだ。度重なるほど、また発作が起こるのではないか?という不安が増して、外出や行動などが制限されるようになる病気だ」
興奮のあまりどこまで話したかわからなくなった周平の話を、相馬が引き取った。
「春名の話をまとめると、『麻里ちゃんには、川村結衣ちゃんの記憶がある』。」
「それを裏付ける事実はいくつかあり、『幼少期から年齢に見合わない知能と言動であること』、『川村結衣ちゃんの住所や事故などを覚えていたこと』、『前世で死亡原因となった水を怖がってパニック障害を起こしたこと』。……もっと言えば、『名前を聞かなくても、部室で会った時に瀬野がわかったこと』だ」
「……」
少し落ち着いた春名が再び口を開いた。
「えーと、それで僕は当時のことを詳しく調べるために、瀬野くんと永井さんを探して転校してきたんだ」
「オレと…永井を?」
永井とは、永井怜子のことだろう。なぜ永井なのだろうか?
確かに同じ小学校で、結衣や自分とも同じクラスだったことはあるが、あの事故とはなんの関係もないはずだ。
「春名が転校してまで、結衣ちゃんの事件を調べに来たのには、理由がある。麻里ちゃんが、『自分が池に落ちたのは事故じゃなかった』ことを思い出したのだ」
「事故じゃ……なかった?」
理解不能な話が続いたが、その一言は、完全に瀬野の息を止めた。
瀬野は、ずっと事故だと思い続けてきた。自分があげた、あの帽子が招いた事故だったのだと。
「麻里ちゃんは、『池に落ちた帽子の様子を見ようとして、身を乗り出した時に、背中を誰かに突き押された』と言っていた」
「我輩は、その事件の捜査を引き受けることにした」
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