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「ふむ……だいぶ真実に近づいてきたようだ。まず疑惑の仮説を否定しよう」
「瀬野は紺野さんとモラルに反するような関係だったのか?——答えはNOだ。もし二人がそんな関係なら、宮市先輩が黙っているはずがない。だが、宮市先輩は瀬野が部活を辞めてから、何度か紺野さんと二人でうちの教室に瀬野に会いに来ていた」
「昼休みに三人が教室前の廊下で話しているのを、我輩の他にも見ていた人がいるはずだ。宮市先輩は、瀬野が辞める本当の理由を聞かされて知っていたのだ」
「…本当の理由?」林が言葉に反応して顔を上げる。
ガタッと瀬野が立ち上がる。
「…!」
「瀬野は膝を故障したのだ。『ジャンパー膝』という、バレーボールやサッカーのプレイヤーに多い故障だ。痛みを我慢して無理してプレイしているうちに慢性的に症状が進むため、サボっていると周囲から誤解を受けたりすることもあるらしい」
「瀬野…そうだったのか?」
「……」
「他の部員に心配をかけないように、事情を知っている宮市部長と、マネージャーの紺野さんがフォローしていた。回復を試みていたが、やはり部活を休止せざるを得なくなった。クラスが違うから林くんは知らないだろうが、瀬野はここのところ、体育も見学しているよ」
「問題は、『なぜ膝の故障のことを言わずに辞めたのか』と言うことだが」
相馬は一度、言葉を切る。
「瀬野は、『自分が故障して大会直前で出られなくなったことに責任を感じて、故障のこと他の部員に碌に説明もしないで辞めていった。言い訳するようで言えなかったのはわかるが、自分も他の部員へ説明に困った』と宮市部長は言っていたよ」
「……先輩と話したのか?」瀬野が言葉短く確認した。
「聞き込みと裏付けは捜査の基本だからな」
考えるように黙り込んでから、瀬野は説明するように言葉を続けた。
「……部長と紺野には感謝してる。2人で休みの日に病院まで付き合ってくれて」
柚香が話しを整理する。
「それが、噂の目撃情報につながったのね。宮市先輩もいたけど、たまたま気がつかれなかれなかったと」
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