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繋がり始めた話を黙って聞いていた林は、やっと腑に落ちた様子で瀬野に向き直った。
「……そっか。そうだったんだな。気持ちはわかるけど言ってくれたらよかったのに。それだけお前がたくさん練習頑張ったってことだろ。責任感じることなんて全然ないよ」
真っ直ぐに向ける曇りのない目に、嘘はなかった。
「…怪我、早く治るといいな。二年生でオレたち二人だけ選手に選ばれて、部活に入ってからもずっと一緒にがんばってきて。お前がいなくなるのは正直淋しいけど……わかったよ」
ガタン、と席を立った林は、もういつもの笑顔だった。
「他の部員にも言っておくよ。いつか気が向いたら、また顔出せよ。みんなでどっか遊びに行こーぜ」
屈託のない彼の笑顔は、今の瀬野には少しだけ眩しすぎた。俯いたまま、でもこの友達想いの友人に、瀬野は心から言った。
「――ああ。ありがとな」
「……ということで、よかったかな?マイワトソン君」
満面の笑顔でこちらを見ていた相馬に、ちょっと不審げな声が出た。
「……おまえさ、結局どこまで知ってるわけ?」
「もちろんすべてだとも。瀬野が、本当の事を言って辞められなかった理由もね――1ヶ月前の林くんとの接触事故が原因だったんだろう?」
ではやはり、相馬は全てを知っていたのだ。今さら隠す理由も無くて、瀬野は事情を話し始める。
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