笑顔 と 花束

1/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ

笑顔 と 花束

 八雲川(やくもがわ)卓也(たくや)、二十三歳、実家暮らし。  職業、週に四日のコンビニバイト。  最近、店長から「バイトリーダーにならないか」と、誘いを受けている。  趣味は漫画を描くこと。  これが僕の現状だ。  それと、もう一つ。  中学から今も変わらず、ずっと好きな子がいる。 「いらっしゃいま……あ、八雲川君。そろそろ来る頃だと思ってた」 「こ、こんにちは。いつもの……お願いできるかな?」  パッと咲いた花のような笑顔で店先に出てきたのは、満田(まんだ)花絵(はなえ)。  彼女こそ、僕が想い続けている女性だ。  この日、僕は花絵が働いている花屋にやって来た。  花柄の淡いピンクのエプロンがよく似合う花屋の店員。  まさに天職だ。  この店に初めて来た時、花絵は高校の卒業式以来だと懐かしがっていた。  そんな彼女に、部屋に飾る花を探しているけれど、あまり詳しくないと伝えると、数本の花を見繕(みつくろ)見繕ってくれた。  それ以来、月に一度、ここに花を買いに来ている。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!