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「満足してくれたなら仮面の話をしないか?」
「いいけど、何を聞きたいの?」
「ジェスターってピエロ知らない?」
「知らなーい」
首をかしげる愛に僕らは質問を続ける。
「じゃあどうやってピエロになったんだ?」
「名乗らないピエロからもらったの」
そういって愛は首をすくめる。そんな愛に杏は僕も気になっていた質問を投げかける。
「愛ちゃんはどうしてピエロになったの?」
「私はね、失恋かな。2年くらい付き合ってた彼に浮気されてたんだ。それで全部がどうでもよくなっちゃってね、死んじゃおうかって時にピエロから仮面をもらったんだ」
「そうだったんだ、辛いね」
「今はもう大丈夫だよ」
大丈夫といった愛だったが心の声はまだ落ち込んでいるように聞こえた。
「ほかには何か知ってることないか?」
「んー、噂話なら一個あるよ」
「聞かせて!」
「仮面についてる涙マークが消えると一生ピエロのままになっちゃうらしいの」
涙マークが消える?仮面のマークは消えるものなのかと思ったが所詮は噂話だろうと話半分で聞いていた。
一通りの話を終えた僕たちは連絡先を交換して帰路につく。
帰りながら愛の話や優の話を思い出す。愛の失恋、優の家庭事情、そして二人とも死にたいと思ったときにピエロが現れていること。杏にもおそらく死にたい過去があるのだろう。
「杏はどうしてピエロになったんだ?」
「まあ、いろいろね」
聞くなと心の声が聞こえてくる。
「前に僕が何を思い悩んでいるのかって聞いたよな。」
「うん、はじめに聞いたね」
「話、聞いてくれるか?」
杏は黙ってうなずく。僕が話始めると静かに聞いてくれる。
「僕は心の声が聞こえるだろ、だからいつも人の聞きたくなかったことまで聞こえてしまうんだ。それで人が嫌になってね、どんどん孤立していった。こんな僕でも小学生くらいまでは友達もいたんだ。恋バナの時話した子が最後の友達だったけどね。そんな日々に嫌気がさして死のうかとも思ったときに君が現れたんだ」
「それであんなに思い悩んでたんだね」
「ああ、話してすっきりしたよ」
僕は本音がわかるけど僕の本音は話さないとわからない。初めて人に本音を話してよかったと思った。それに、杏はなんだかあの子に似ている気がするんだ。
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