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ピエロの最後
3人目のピエロの捜索は順調に進んでいた。しかし会えたのはいいがどうも態度がとげとげしい。雲行きが怪しくなってきたなと僕は思ったがこれまでのピエロがフレンドリーすぎただけだと思いなおした。
「なんなのあんたたち。あたしを付け回してさ」
「君に話があってきたんだ」
「あたしには関係ないわ」
「そう言わないで話だけでも聞いてくれよ」
「嫌よ」
ピエロの態度は取り付く島もないといった感じで僕ではどうしようもなかった。
コミュニケーション能力に優れている杏なら少しくらい聞きだしてくれるだろうと思ったがその考えは甘かったと思い知らされる。
「ねえお願い! 話聞かせて!」
「もしかしてあんたがピエロ?」
「そうだよ、私この仮面を外したいの。だから協力してほしいんだ」
「あんたこの顔を覚えてる?」
そう言ったピエロは一瞬で女の子になる。大きな茶色い瞳と茶髪でボブの髪型の可愛らしい女の子だ。
「あなた、あの時のまりかちゃん?」
「ええそうよ、あんたのせいでピエロになってしまったまりかよ」
あの時?あんたのせい?僕には全然わからないがこの二人には何か因縁があるようだ。
「あたしだって仮面は外したいわよ! でもあんたのせいでそれもできない!」
声を荒らげる彼女に杏は何も言い返せないでいる。
「ちょっと待ってくれ、僕にもわかるように説明してくれないか?」
「この女があたしに仮面をかぶせてピエロにしたのよ。毎日楽しくなるなんて嘘をついてね」
どうやら彼女は杏から仮面をかぶせられた一人だったようだ。
「あんたのことならあたしは協力しないわ」
そう言ってまりかと呼ばれた彼女はどこかへと姿を消してしまった。この日僕は彼女に小さな違和感を感じていた。しかしその違和感の正体まではたどり着けなかった。
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