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「心の声は死にたいって言ってるぞ」
「そんなわけないでしょ、こんなにも楽しそうなのに!」
「僕は心の声が聞こえるんだ」
ピエロは怪しいものを見るかのような視線をこちらに向けてくるが自分が僕よりはるかに怪しいということを自覚してほしい。
「じゃあ当ててみてよ」
そういってピエロは今までのおしゃべりから一転黙りこくってしまった。
(……夕飯はコロッケ)
「夕飯はコロッケって言った」
ピエロの心の声を復唱するとピエロは驚いたようなしぐさをして見せる。
「ほんとなんだ! すごい!」
「別にすごくないよ」
すごくないといった今の言葉は本音だ。すごいも何もこの力で損をしたことはあっても得をしたことはないのだから。あるとすればさっき騙されなかったくらいだ。
「じゃあ嘘ついてもしょうがないね」
そういって笑ったピエロはゆっくりと僕の隣、ベランダへと降り立つ。その瞬間ピエロの仮面が消え素顔が見える。彼女の素顔は一言でいうと美少女だった。茶色い大きな瞳に長いまつげ、そして桜色の唇は神の寵愛を受けたとしか思えないほど整っており長い黒髪は月明りを受けてキラキラと輝いている。僕は少しだけ彼女に見とれてしまった。
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