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ピエロの仮面
次の日の夜、僕は昨日のことが夢であってほしいと思いながらベランダで彼女を待っていた。月がきれいだなんて思っていたその時、残念なことに彼女が僕の目の前に現れた。
「お待たせ」
「待ってなんていなかったさ」
「昨日ぶりだね」
「ああ、昨日君と出会ったことが夢であってほしかったよ」
「残念ながら現実だよ」
ベランダに降り立った彼女はそう言って少し笑う。その笑顔は月よりも綺麗だった。
「ところで君は昨日何を思い悩んでいたの?」
「まあいろいろさ」
「そっか」
彼女はそれ以上深くは聞いてこなかった。多少の気遣いはできるらしい。
「そんなことより君の名前はなんていうんだ? 嫌々とはいえ協力者なんだから名前くらい教えてくれてもいいだろう」
「そういえば自己紹介忘れてたね。私は里中杏だよ。杏って呼んでね」
「杏か、いい名前だな」
「えへへ、ありがと。それで、君は?」
「僕は山本翔、好きに呼んでくれ」
「じゃあ翔君ね」
いきなり名前で呼ぶタイプは一番苦手だが好きに呼んでくれと言った手前どうにもできない。彼女の名前が分かったところで純粋な疑問をぶつける。
「昨日言ってた仮面を外すっていうのはどういうことなんだ?」
「それはね、仮面が外れないから外したいって意味だよ」
意味不明な答えが返ってきて僕は少し困惑した。なんせ彼女が今仮面などしていないから外すことなど不可能に思えるのだ。
「今仮面なんてつけていないじゃないか」
「違うんだよ、見えてないだけでつけてるの」
またもや意味不明な答えが返ってくる。その仮面とやらは何なのだろうか。不気味で仕方がない。
「見えないなら外す意味あるのか? ていうかその仮面なんなんだよ」
「そっか、説明がまだだったね」
そういった彼女は仮面について説明を始める。
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