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「この仮面はね、見えなくしたりできるんだ。それで、仮面が見えてる間は服装もピエロみたいになるんだよね。あと、空に浮いたりできて便利だよ」
「それなら便利でいいじゃないか」
「ところがどっこい、つけると外せないうえに泣いたり怒ったりみたいな表情ができなくなるんだよ。それにね、死のうと思っても死ねないの」
「つまり今みたいに笑ったままってことか」
説明を聞いてもにわかに信じがたいことばかりで頭がおかしくなりそうだ。しかし仮面についてわかったことで昨日言っていた「君しかわかってくれる人がいない」というのは納得できた。いつも笑っていては死にたいなど信じる人はいないだろうし、仮面のことなんて余計に信じる人はいないだろう。
「なんでそんな仮面かぶったんだよ」
「興味本位でつい」
てへぺろと自分の頭を小突く杏を無性に殴りたくなったがぐっとこらえて仮面について話を進める。
「この仮面どこで手に入れたんだ?」
「なんかね、ジェスターっていうピエロからもらったんだ」
「そんな怪しいのよくかぶったな」
仮面を外したとして杏の将来が心配になってきた。詐欺などに簡単に引っかかりそうだ。
「仮面の外し方ならそのジェスターってやつに聞けばいいんじゃないか?」
「どこにいるかわかんないから困ってるんじゃん」
「じゃあそいつを探さないといけないってことか。何か特徴とかないのか?」
「仮面に涙のマークがなかったくらいかな」
「涙マークのないピエロを探せばいいんだな」
とは言ったものの手がかりもほとんどない人をこの地球上から探すというのは骨が折れる。そう思うと自然とため息が出てしまう。
「ほかに方法はないのか?」
「私以外にもピエロになった人がいるからその人たちなら何か知ってるかも」
ほかにもピエロがいっぱいいるらしい。そうであればその人たちに話を聞くのが一番現実的ではあるがどうやって見つければいいのだろうか。
「問題はどうやってピエロを探すかだな」
「それなら簡単だよ」
そういって杏は自慢げに笑う。
「近くにいるピエロはお互いに大体の場所がわかるの。仮面を配るときの目安になるしね」
「なるほど、効率的だな」
杏によるとどうやらこの辺りにはピエロが三人ほどいるらしい。まずは一番近くにいるピエロに話を聞くことにする。
しかし、毎日遅くまで探しているとお互いに昼間の生活に支障が出るため週末に行動することにした。
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