優しい奥様

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「やっぱりそうですよね」  加藤さんは勢い込んだ。 「旦那は『お袋の好意だよ』て言うんですけど、私にはどうもそうは思えなくて……。で、春休みに旦那実家に行った時、お舅さん青白い顔してテレビの前に座ってて……。あんなに活き活きして働いていたお舅さんが、まるで引きこもりニートなんですよ。ずっと、1日中、タバコ吹かしてビール飲んで、好きなモノ食べて好きな番組見て過ごしているんです。動くのはトイレくらい。あ、作り置きをレンジで温めるくらいはしてたかな? 後は全部、お姑さんが上げ膳据え膳で世話を焼いてるんです。普通、逆ですよね? 外に出ろ、運動不足になるな、コミュニティ広げろって発破掛けるもんだと思っていたのに……」 「()る気満々だな、それは」  山田さんがカラッと断じた。 「ですよね……。お舅さんがトイレに立った時、座ってたソファがべっこり凹んでるのを見てゾッとしたんです。でも、だあれも問題を指摘しないし、ニコニコして黙っているんですよね。お舅さんを誘っても面倒くさがって外に出ようとしないし、誘うだけ無駄よってお姑さんはカラカラ笑ってるし……」 「いやぁ……でも、下手打つと中途半端に寝たきりになって却って大変になるんじゃないのかしらぁ?」  末吉さんが腕を組んで唸ると、佐々木さんがチラリと目配せした。 「そりゃぁ、そこは上手くするのよ」 「こっわぁー」  三宅さんが顔を覆って肩をすくめた。  「まぁ、……夫婦なんて元は他人同士なんだから、何か思うところがあるのかもしれないわよ。下手に首突っ込まないで知らん顔していた方がいいと思うわ」  佐々木さんが言うと、お姉様方はスンとした顔で頷いた。
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