婚約を破棄してほしいと願うのに

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   ◆ 「殿下の心移りもしかたないですわよね。救国の聖女を迫害する令嬢なんて、婚約者にしておきたくないでしょうから」 「同感です。あぁ……何度思い出しても、すばらしい婚約破棄でしたわ」  王立学院の渡り廊下。  向こう側から歩いてきた女生徒たちは、アマリアに気づくと意味ありげな視線を送ってきた。 「現実の世界でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思いませんか?」 「えぇ、そうですわね」  すれ違いざま、彼女たちはわざとらしく声量を上げる。  アマリアが視線を向けると「きゃっ」「怖い怖い」と悲鳴を上げて、逃げるように走り去った。  彼女たちの姿が見えなくなったところで、アマリアは空を見上げる。 (悪役令嬢。今、巷で流行っているという歌劇の登場人物でしょうね)  雲ひとつない快晴だ。  澄み渡る青。  心中とは真逆の爽快さに、深く溜め息を吐き出した。  アマリア・フォンターナ。  美しく豊かな金髪と淡い紫色の瞳を持つ彼女は、子爵家の令嬢である。
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