72人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、胸の鼓動はアマリアと同じ速さでリズムを刻んでいた。速く、どんどん速く。
「私もだ、アマリア」
そしてルーカは己の婚約者にだけ聴こえるように囁いた。
ようやく会えた、会いたくてたまらなかった、と熱を込めて。迸る情がアマリアの耳朶を打ち、頬を真っ赤に染めさせる。
ぱちぱちぱち。
拍手をはじめたのは満面の笑みを浮かべたマルティナだった。
すると拍手はどんどん広がっていき、ほぼ全員がふたりに向けて祝福を贈っていた。
◆
数日後。
「マルティナ様。改めて、本日はお招きありがとうございます」
「何度も言っているが、かしこまらなくてもいいのだよ?」
「そうは仰いましても……」
アマリアは淡い紫色のドレスを纏って、歌劇場の特別貴賓室にいた。
特別貴賓室へ足を踏み入れるのは当然ながら初めてだったが、観劇用の部屋とは思えないほど豪奢なつくりに目眩を覚えていた。
何故アマリアが場違いな空間にいるのか?
答えは簡単。マルティナの希望で『救国の聖女』を共に鑑賞することになったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!