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隣国に対して失礼がないようにと、ドレスと靴は急遽製作されたものである。初めての友人が隣国の王女という事実に両親は卒倒しそうになっていたが、出来うる限りのことをして愛娘を送り出してくれた。
「ドレス、似合っているよ。美しい」
「あっ、ありがとう、ございます」
紺色の地に金銀のビーズ刺繍が散りばめられたドレス。絢爛さが似合いすぎるマルティナは、ぱんっと両手を叩く。
「私はずっと同性の友人がほしかったんだ。願いがかなって、今日は最高の日だ!」
王女らしからぬ言葉使いと、その内容。
アマリアは曖昧な笑みを浮かべた。
……アマリアは思い出す。
踊り場でアマリアとルーカが想いを確かめ合った後、三人はひと気のない工芸室へと移動した。
そこで告げられたのは驚きの事実だった。
『マルティナ様は実に血気盛んで、騎士団の研修にも参加されていたんだ。信じられない強さで、私たちを打ち負かしてきた』
『研修生とはいえ君たちの軟弱ぶりには驚いた。その中で最も骨があると感じたのがルーカだったんだよ』
(言葉遣いが……!?)
微笑むマルティナは、王女というより王子だった。
アマリアはぽかんと口を開けた。
『ははは。驚かせてすまない。実はこちらの話し方の方が素なんだ』
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