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その結果がどうなったのかアマリアは恐ろしくて聞けていない。しかしそのうち、否応なしに耳に入ってくるだろう。
……そして、今日に至る。
「しばらくこの国に滞在して、研修生の皆に稽古を続ける予定なんだ。空き時間は是非、この国の菓子をいただいたり歌劇を鑑賞したいものだ」
アマリアの手を取って、マルティナがきらきらと瞳を輝かせた。
鍛えているはずなのにすべすべと滑らかで柔らかな手。アマリアは思わず声を上げてしまう。
「マ、マルティナ様!?」
「宜しく頼む、アマリアさん」
「あ、あの、マルティナ様。ひとつ伺いたいのですが」
「何だい?」
「……わたしの目つきが怖いと感じたり、しませんか?」
ふふっ、とマルティナが微笑んだ。
「まさか。それに、ルーカからずっと話を聞いていた。自分の婚約者は、口下手で貴族らしい社交性は少ないものの、すばらしい本や美味しいお菓子、美しい景色を知っている、と。彼女といると、心が穏やかになるとも」
ぼっ。アマリアは耳まで真っ赤に染まってしまう。
「安心するといい。ルーカは、アマリアさんのことを大切に想っているから」
「マママ、マルティナ様!?」
「さぁ、劇が始まりますわ。楽しみましょうね、アマリアさん」
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