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突然丁寧な言葉遣いに戻って、マルティナは片目を瞑ってみせるのだった。
◆
歌劇が終わり、マルティナは専用の馬車で帰っていった。
アマリアを迎えに来たのはルーカだった。
家が近いというのもあり、ふたりは護衛をつけながらも夜道を歩く。
「マルティナ様は人格者ですね。気品もありながら、気さくで親しみやすくって。おまけに強いだなんて、信じられません」
興奮冷めやらぬまま、アマリアは珍しく饒舌になっていた。
「さっきから、歌劇の内容よりマルティナ様の話ばかりだな」
「す、すみません」
ルーカは苦笑いで返すも、どことなく嬉しそうに見えた。
「ルーカ様?」
「人との交流で楽しそうにしているアマリア嬢は初めて見た。マルティナ様に嫉妬しそうになるが、ほんとうによかった」
「……ご心配をおかけして、すみません」
「そうだな。心配はしていた。何もできないことに歯がゆさも感じていた。だが、君に心強い友人ができたことはとても嬉しい」
どちらからともなく立ち止まり、ふたりは見つめ合う。
「好きだよ、アマリア嬢。私の心を動かすことは、君にしかできない」
「……わたしも同じです。ルーカ様のことが、大好きです」
差し出された手。
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