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しかし、きつい顔つきと極度の口下手から『性格が悪い』と誤解され、友人と呼べる人間はひとりもいない。動物も、アマリアと目が合うと逃げていく。
実際はただの内気で、引っ込み思案なだけだというのに。
唯一まともに会話ができる相手は、幼い頃に家が決めた婚約者。侯爵令息、ルーカ・マンチーニのみ。
ルーカは眉目秀麗と名高く、学院内に隠れファンも多い。あまり愛想はよくはないが『逆にそれがいい』という評価になっているらしい。
そんな彼が話しかける異性は婚約者のアマリアのみ。
目立った嫌がらせを受けている訳ではないためにルーカへは伝えてはいないが、アマリアは一部から嫉妬の対象にもなっている。
アマリアは、本に挟んでいた押し花の栞を取り出した。
隣国でしか咲かないという紫色のビオラはルーカから送られたものだ。
彼は今、騎士団配属前の研修のため隣国にいる。
――君の瞳と同じ色の花を見て、穏やかに過ごせているか気になったよ。
アマリアとルーカは定期的に手紙のやり取りをしている。
この押し花は半年ほど前、最初の手紙に添えられていたものだ。以来お守りとして大事にしてきた。
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