婚約を破棄してほしいと願うのに

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 アマリアは自室のバルコニーへと出た。  静かな藍色の空には無数の星が瞬いている。  すぅっ、と空にひとすじの光が流れた。 (ルーカ様との婚約を破棄した方が……。その方がルーカ様のためにも、国のためにもなるに違いありません)  いつしかアマリアの頬にもひとすじの涙が伝っていた。 (泣いてはだめ。この婚約破棄はわたしにしかできないことだと思えば、寧ろ、誇れるのだと思わなければ……)    ◆  婚約の破棄を決意した翌日。  アマリアは、学院の二階にある図書室の戯曲コーナーにいた。  手に取った分厚い本は『救国の聖女』。人気を博している件の婚約破棄ものだ。  悪役令嬢というキーワードを避けてきたために読むのは初めてだった。 (婚約破棄されるような悪役令嬢とはどんなものなのでしょうか)  ぱらぱらとめくって、アマリアは絶句した。  聖女に対する悪役令嬢の行為は絶句するものばかりだった。  持ち物を隠す。聞こえるように悪口を言う。  自分で手を下すのではなく、取り巻きを使って聖女を不利に追い込もうとする。 (悪役令嬢って、なんてひどいのかしら! 聖女を徹底的にいじめぬいて……。これでは王太子殿下から婚約破棄を言い渡されて当然でしょう)
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