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あまりの悲惨さにアマリアは怒りを覚える。
同時に、自分にそんなことはできないと本を閉じた。
(やはり創作は創作。現実に悪役令嬢なんて存在しないのですわ)
本を棚に戻して図書室を出ようとしたとき、窓の外から歓声が響いてきた。
中庭を歩いているのはルーカだった。
輝く金髪、中心で分けられた前髪が歩く度に揺れて煌めく。
変わらない、晴れ空のように青々とした三白眼。
しかし半年前よりも体格が立派になっている。厳しい研修を終えたことで、明らかに男性特有の精悍さを増していた。
(ルーカ様。益々すてきになられて……!)
アマリアの胸は高鳴ったものの、すぐに冷える。
彼はひとりではなかったのだ。傍には、三つ編みにされた朱い髪を揺らす女子生徒。
見慣れないのと、その後ろに護衛がついていることから、誰なのかアマリアにもすぐ理解できた。
(隣国の王女様に違いありません。遠目からでも分かる気品。なんて麗しいお方……)
しばらく見つめていると視線に気づいたのか、ルーカがふっと顔を上げた。
窓は開けていないものの、アマリアとルーカの目が合う。
反射的にアマリアはしゃがんで隠れた。
どっどっどっ。心臓が早鐘を打っている。
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