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事実にされてしまったら、それこそこの国の終わりではないのか。何故、捏造してまで大事にする必要があるのだ。
アマリアは誰かの浅慮に気が遠くなりそうだった。
何も言えないでいるアマリアとは対照的に、マルティナが声を張り上げる。
「皆さん、お静かになさってください。そのようなことは事実無根です!」
しかし、それは火に油を注ぐようなものだった。
「マルティナ様がアマリア様を庇っていらっしゃる。美しいだけでなく、なんて慈悲深いお方なんだ!」
また誰からともなく非難が上がる。
アマリアは俯いて唇を噛みしめた。痛々しい熱の中心に縫いとめられ、もはやまったく動けない。
「……アマリア嬢!」
上からアマリアを呼んだのはルーカだった。
それでも、半年以上ぶりに会う婚約者をアマリアは見ることができない。
「アマリア嬢」
再び、ルーカがアマリアの名前を口にする。
おそるおそる、ようやく、アマリアは顔を上げた。
集まっていた生徒たちが道を開け、彼が踊り場へと降りてくる。
(お会いしたかったです、ルーカ様。ですが……)
再会は、関係の終わりを意味するのだ。
(会いたかった。会いたく、なかった……)
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