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失恋した。
いや、もともと存在しない架空の王子様に恋をしていたのだ。
さすがに失恋とは呼べない…。
「はぁ…」
「…知らない方がいいこともあるって言ったじゃない」
「でもぉ…詐欺でしょ?」
昨夜の出来事を愛良に話す。
考えれば考えるほど、あの爽やかな王子様と昨日の黒い笑顔で話す律が同一人物とは思えない。
ただ、夜子が思いたくないだけなのだろうか…意外にも愛良から驚きの声は上がらなかった。
みんな騙されている。
周防 律の春風をも感じさせる程の爽やかな笑顔に、多くの女の子が騙されている。
「あの…詐欺師め… …」
「詐欺師って?…俺のこと?」
背後から声がしたかと思うと同時に、頭にぽんっと大きな手が乗せられる。
ゾゾゾ~!!と背筋に悪寒が走った。
恐る恐る…頭だけで振り返る…
「傷つくなぁ♪夜子ちゃん?」
「ぎ、ぎゃ~~~っ!!」
耳元でささやかれ、大声で叫んでしまった。
そんな夜子の様子を観察し、律が密かにニヤニヤと笑っている。
ーーこ、この…ブラックスマイル~!
律が自分の胸ポケットから一冊の生徒手帳を取り出し、いつもの王子様スマイルで、言った。
「これ夜子のでしょ?昨日、落としてたよ」
ーーそれで名前、知ってたのか…。くそっ笑顔かっこいいなぁ…
「…ど も…」
そう言って、律の持っている生徒手帳に手を伸ばす。
が、さっと取り上げられてしまい果たせなかった。
「・・・?」
ーー・・・は?
律に視線を戻すと、あの夜子の大好きだった王子様スマイル。
「ありがとうございます。でしょ?」
この爽やかな仮面の下は… …
ドS王子様でした。
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