私の好きな人

12/12
前へ
/127ページ
次へ
1年10組。 1冊の雑誌を囲む円(まどか)と田中と鈴木の元へ、律が鼻歌交じりに帰ってくる。 「りっくんどこ行ってたの?」 「ちょっとお隣さんまでね〜♪」 鈴木の問いににこっと笑顔で答え、所定の位置である 円の隣に当然のように座った。 「…ご機嫌じゃん?」 満足そうに笑う律を見て、円が言う。 橘 円(たちばな まどか) 律の親友である。 フランス人の祖父から受け継いだ薄いオリーブブラウン色の髪の毛はキラキラと輝いており、瞳の色は宝石のような青紫色。 奥澤高校の妖精と呼ばれる彼は、ルックスも中性的な雰囲気だが律と並ぶとまさに、童話の中の王子様とお姫様。 律と円の付き合いもかれこれ4年になる。 いつでもにこにこと爽やかな笑顔の律からは、普段あまり感情の起伏が感じられない。 能天気で悩みもないのではないか…とさえ感じられる。 ただ長年付き合っていると、円には律の機嫌の良し悪しくらいは分かるのだ。 「まぁね♪お隣に、おもしろいの見つけた」 その笑顔は子供が新しいおもちゃを手にした時のような、無邪気な笑顔だった。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加