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1年10組。
1冊の雑誌を囲む円(まどか)と田中と鈴木の元へ、律が鼻歌交じりに帰ってくる。
「りっくんどこ行ってたの?」
「ちょっとお隣さんまでね〜♪」
鈴木の問いににこっと笑顔で答え、所定の位置である
円の隣に当然のように座った。
「…ご機嫌じゃん?」
満足そうに笑う律を見て、円が言う。
橘 円(たちばな まどか)
律の親友である。
フランス人の祖父から受け継いだ薄いオリーブブラウン色の髪の毛はキラキラと輝いており、瞳の色は宝石のような青紫色。
奥澤高校の妖精と呼ばれる彼は、ルックスも中性的な雰囲気だが律と並ぶとまさに、童話の中の王子様とお姫様。
律と円の付き合いもかれこれ4年になる。
いつでもにこにこと爽やかな笑顔の律からは、普段あまり感情の起伏が感じられない。
能天気で悩みもないのではないか…とさえ感じられる。
ただ長年付き合っていると、円には律の機嫌の良し悪しくらいは分かるのだ。
「まぁね♪お隣に、おもしろいの見つけた」
その笑顔は子供が新しいおもちゃを手にした時のような、無邪気な笑顔だった。
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