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夜子の作品を眺める人々の中
一人の男性の後ろ姿に目が留まる。
じっと、身動きすることなく
夜子の写真を眺めていた。
ふわっとややゆるくクセのある髪は色素が薄く、柔らかい。
高い身長に小さな顔。細身の体と長い手足…
夜子はゆっくりと、その後ろ姿に向かって歩く。
そして、その男性の隣に並び…
自分の作品を見上げた。
タイトルは
『je te veux ーあなたが 欲しいー』
「…ダメだった…最優秀賞」
「… …だね」
くすりと笑う。
「でも…1番、好きな写真なの」
「そ?どんなとこ?」
作品を正面にし、じっとみつめる。
それは、一人のピアニストの写真
深い深い苦しみから解放されて
ようやく、愛を求める力を手に入れた…
そんな、情熱的な…
愛を奏でるピアニスト。
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