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王子の仮面
"高級住宅街"
この辺りでそれを聞けば、まず思い当たるのはここだ。
大きな屋敷の立ち並ぶ一区画に堂々とした門構えの洋館があった。
"玄関"と呼ぶのが正しいのか。
フロアはサロンとなっており、白いグランドピアノと、見上げる程に大きな古城の描かれた絵画が飾られていた。
「あらあらあら!律くんはまた一段と凌(りょう)くんに似てきたわねぇ!本当にハンサムだわぁ♪」
「ありがとうございます」
この屋敷の主がフランスから取り寄せた白いレザー調のソファに深々と腰掛けている、真っ赤の派手なスーツに身を包んだマダムに向かい、律は可愛らしい笑顔を持って返す。
「素敵ねぇ…お兄様より素敵なんじゃないの?」
律の笑顔に悩殺され、マダムは胸の前で手を合わせた。
正に乙女のように…
「まさか、兄には及びませんよ」
再び笑顔を作った。
「それでは、僕がいてはお話も盛り上がらないでしょうし…失礼しますね?」
そう言ってマダムの向かいに座る母親に目配せをすると
「えぇ、そうね。円くんもいらしてるし…」
そう言って律の母親、冴子(さえこ)は弱々しく微笑んだ。
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