王子の仮面

1/12
前へ
/127ページ
次へ

王子の仮面

"高級住宅街" この辺りでそれを聞けば、まず思い当たるのはここだ。 大きな屋敷の立ち並ぶ一区画に堂々とした門構えの洋館があった。 "玄関"と呼ぶのが正しいのか。 フロアはサロンとなっており、白いグランドピアノと、見上げる程に大きな古城の描かれた絵画が飾られていた。 「あらあらあら!律くんはまた一段と凌(りょう)くんに似てきたわねぇ!本当にハンサムだわぁ♪」 「ありがとうございます」 この屋敷の主がフランスから取り寄せた白いレザー調のソファに深々と腰掛けている、真っ赤の派手なスーツに身を包んだマダムに向かい、律は可愛らしい笑顔を持って返す。 「素敵ねぇ…お兄様より素敵なんじゃないの?」 律の笑顔に悩殺され、マダムは胸の前で手を合わせた。 正に乙女のように… 「まさか、兄には及びませんよ」 再び笑顔を作った。 「それでは、僕がいてはお話も盛り上がらないでしょうし…失礼しますね?」 そう言ってマダムの向かいに座る母親に目配せをすると 「えぇ、そうね。円くんもいらしてるし…」 そう言って律の母親、冴子(さえこ)は弱々しく微笑んだ。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加