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「お。終わったの?ご挨拶」
「あー。お前なに勝手に見てんのよ~?」
律の部屋の本棚とは呼べない程に大きな本棚から、円が一冊のアルバムを手にしていた。
「色々大変だな。ぼっちゃんも」
「そ?楽なもんよ?にこにこして返事してりゃいいだけだし」
「・・・それはお前の才能と思うけど?」
俺はムリ~とつぶやきながら、円は再びアルバムに目を落とす。
「もうやんねぇの?ピアノ」
「…やんないねぇ。飽きた」
「ふーん。もったいね…」
ペラペラとアルバムをめくる。
「これとか、国際なんちゃらコンクールで賞とったって書いてんじゃん?」
ご丁寧にも美しく整った文字で、写真の横にそう書かれていた。
「まーくん。君は俺のストーカーなのかなぁ?」
「は?」
おもむろに嫌そうな表情をする円に、律が重ねて言う。
「俺の幼少期まで知りたいなんて…俺のこと、大好きだよね?」
にやっとその整ったマスクに不敵な笑みを浮かべ、円の手からアルバムを取り上げる。
そして指先で円の顎を引き寄せ、言った。
「そんなに俺のこと知りたいなら、もっと教えてやろうか?…ベッドの中で」
「気っ色悪りぃこと言うな!」
「え~何で?俺はありよ?」
円の反応にケラケラと笑いながら、律はアルバムをカウンターに放り投げた。
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