王子の仮面

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「なぁ大丈夫なの?周防病院。あんなのが後継者で」 「お前ねぇ、何のために俺が生まれたと思ってんの? 俺がいるから大丈夫でしょ♪」 そう言ってにこっと微笑む律。 「え?律…医者になるの!?」 「何だよ今さら。お前そんなに俺に興味ない?」 がっかりと言わんばかりに律が悲しい顔をしてみせる。 「だって、なんか似合わねぇ…」 「似合う似合わないの問題じゃないでしょ。周防の男は医者になる定めなのよ~♪」 周防病院は律の祖父の代から続く、この辺りでは割と大きな病院である。 律の父とその弟。つまり律の叔父にあたるのだが、今は世代交代され、この2人が切り盛りをしている。 そして次期院長には当然、律の兄である凌の名前が上がっているのだ。 「…俺、お前はずっとピアノ続けるもんだと思ってたけど?」 「はは ピアノで食ってくの?上には上がいるよ」 円のキラキラとした薄い青紫色の瞳が律をじっと見つめる。 ーーあ。この目…時々こいつの表情が読めないんだよねぇ… 「…俺はお前が医者になっても、絶対かかんねぇからな」 「何でよ?お安くしとくよ~♪」 本当のところ、医者なんて興味はない。 世のため人のため、素晴らしい職業だとは思うが、祖父や父親のように家庭も顧みず朝も晩もなく働くのだ。 そこまで尽くせる魅力は律には感じることができなかった。 しかし、これは生まれる前から定められている運命。 律が"この世に生を受けた理由"でもあるのだ。
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