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冬の夕方はすでに夜である。
授業も終えた放課後。
試験期間に突入した今、大会を控えた一部の運動部以外は休部となっていた。
夜子の所属する写真部も例外ではない。
「あれ?そう言えば夜子あんた…今日写真部の鍵を預かってる~って、言ってなかった?」
ふと思い出したかのように言う愛良の発言に、夜子がはっ!と目を見開く。
「あーーー!ヤバ!今何時!?」
「6時過ぎ」
「もう真っ暗じゃーん」
「現像室って、暗室でしょ?何か関係あるの?」
「怖いじゃん!オバケが出るじゃん!?」
「・・・いや、そんな力説されても…出ないわよ」
「うわーん!…クマちゃん?一緒に行か」
「行かない」
「早いよっ!」
「つべこべ言ってないで早く行ってきなさいよ~。じゃ、私は帰るからねぇ?さよーならー」
非情にも愛良は夜子を振り返ることもなく、ひらひらと手を振り帰って行ってしまった。
大会を控えた運動部の掛け声のみが聞こえる中、相変わらず実技棟は閑散としている。
ーーこ 怖い…オバケ いるよねぇ?
カツーン… …
「ひぃっ!!!!」
小さな物音にもビクビクしてしまう。
ーーう~…やっぱり今日はやめとこうかなぁ…?また明日明るくなってから…
と、音楽室の前を通りかかった時だった。
ぼんやりと月明かりに照らされた
人影…
「あれ?こんな所に女の子が一人でいるなんて…
襲われたいの?」
不敵に笑う律が、立っていた。
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