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カシャッ … …カシャシャッ…
「寒いっ!!」
クマちゃん、こと熊笠 愛良(くまがさ あいら)が叫ぶ。
「お外行こうなんて言うから何かと思えば…私を無視して写真撮ってんじゃないわよ!このカメラばか!!」
「だって!初雪だよ!?雪~♪」
キラキラとした笑顔でカメラを構える夜子に愛良はため息をつく。
そのため息さえも、凍てつく寒さに白く舞い上がって行く。
「クマちゃーん♪笑って~」
「は?やぁよ!私を撮るなぁ!」
「ひゃ~息でメガネが曇る~」
夜子がメガネを外し、服の袖できゅきゅっと曇りを取る。
「夜子そのダサ眼鏡やめなぁ?」
「ひどっ!気に入ってんのにぃ!」
「ダサい!」
きっぱりと言い、愛良が眼鏡を取り上げる。
夜子の小さな顔が半分隠れてしまうほどの大きな黒縁の眼鏡は、それだけで視界を妨げる。
「ま ま まぶしぃ~」
そう言ってカメラのレンズを覗き視界を遮る。
「眼鏡取ったらかわいいとか、少女マンガかあんたくらいしかないわよ?だいたいこのダサ眼鏡、度も入ってないんでしょ?」
「う…だから、気に入ってんだってばぁ~。あまりダサいダサい言わないでくださる?」
「ダサいもんはダサい!こんなダサい眼鏡しててあの周防律を落とせると思ってんの!?」
びしっ!と夜子の覗くカメラのレンズに愛良が人差し指を立てた。
しんっ… …
一瞬の沈黙。
「・・・は?思ってるわけないじゃん?」
「え~。何?その擦れた感じ…」
夜子がカメラから目を離し深〜くため息をつく。
「クマちゃん…もっと現実を見よぅよ。あの周防律だよ?学園の王子様だよ?私なんて存在さえ知られてない…蟻と一緒よ!蟻!」
「いや、何もそこまで…」
「私は律くんの笑顔が見られたらそれでいいの~!いちファンでいいの♪」
「ふーん…ま、知らない方がいいことも…あるかもね」
「そりゃ、本当は王子様のキスとか…憧れちゃうけど?」
「・・・ちょ、メルヘン キモいんですけど?」
引くわ~と、愛良が自分の腕をさすった。
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