私の好きな人

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すでに夜の9時を回っていた。 冬の日の夜はしんっと冷え込んで特に薄気味悪い。 ダダダダダ… … ーー信っじらんない… ダダダダダダ… … ーー熱中しすぎてこんな時間まで居残りしてしまったぁ すでに真っ暗となった校舎の階段を勢い良く駆け下りる。 ーーわ~ん怖いよ~!オバケが出る~!! 夜子は、中庭を挟んであちらに見える教室棟の明かりを横目に、すでに他の部は部活を終え、真っ暗となった実技棟の階段を駆け下りていた。 … …~♪ ~ ~♪… … 「っ!!???」 どこからともなく、かすかに聴こえてくる… ーーピ…ピアノ… …? ゾゾゾ~と悪寒が走る。 恐る恐る音のする方を見やると、うっすらと蛍光灯のような明かりが部屋の隙間から漏れていた。 ーーあそこ…音楽室、だよね?何だ。吹奏楽部にまだ残ってる人がいるんだ? ほっと胸をなでおろし、そのピアノの音色に耳を傾ける。 ベートーヴェン ピアノソナタ第13番   月光 ドキッとした。 ドキッと言うより… ズキズキと 胸が痛む… … ーーなんで…こんなに、悲しいの…? その旋律に導かれるように、そっと音楽室へ近づいた。 ーー誰が こんな悲しい旋律を…?
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