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2.腹筋と背筋
「みんな体操服に着替えたね? 我が吹奏楽部ではまず、体操服に着替えてみんなでラジオ体操をします。これは固まった身体をほぐす目的があります。遅刻してきても1人だろうがやってください。それでは音楽を流します」
新1年生から3年生全員で合奏隊形に並び、両手を広げて間隔を取る。ざっと見渡してみると、全員で50名ほどだった。私たちオーボエは一番前のど真ん中なので、サボったりしたら指揮台に立っている部長に即注意される。
柴咲高校は公立高校で、正直吹奏楽部もそんなに強くない。コンクールでは、過去に全国大会まで進んだことはあるらしいが、一昔前の話だ。去年は都大会を突破し東京支部大会に進んだが、銀賞という微妙な結果で終わった。(参加した学校は金・銀・銅のいずれかで評価される)
今年は全国大会出場を目指し、練習メニューを変えた。ラジオ体操は去年から始めた練習メニューだ。私たちは発展途上中なのである。
小学生の頃、夏休み中の朝に近所の公園でやっていた時と同じラジオ体操の音楽が流れる。ピアノの軽快なリズムに合わせて私たちは動き出した。
「1年生っ。恥ずかしがらないでー! 隣の先輩を見て本気でやってください!」
序盤から部長の檄が飛ぶ。隣の室井君を見ると、腕は全然上がってないし足も全然動いてなかった。まさにダラダラしている。タコの足みたいな動き方だ。ラジオ体操というのは本気でやれば息が切れるくらいすごい体操なのだ。それなのにこんなにダラダラして。もったいない。
「室井君。ダメだよそんなんじゃ。もっとキビキビしないと」
「はぁ……」
他の1年も恥ずかしそうにしている。まぁ最初はこんなもんか。私も初めは恥ずかしかったし。もう慣れたけど。
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