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おおよそ20回した後、室井君と交代して彼の足首を持つ。彼は無表情で腹筋を始めた。
「いーち……にーい……」
あれ? ちゃんと息を吐きながらゆっくりやっている。てっきり不真面目に流すかと思ったのに。なんだ。先輩の言うこと聞くなんて、かわいいとこあんじゃん。
ただ、10回超えても苦しそうな表情さえ見せないのはかわいくない。
真面目に腹筋を終え、次は背筋だ。これは2人で一緒にする。
「背筋はうつ伏せになって、両足は肩幅に、両手はバンザイする」
「はい」
「息を吐きながら両手両足を地面から浮かせて、全身を反らす」
「はい」
「反らせたまま、5秒、止まる!」
「…………」
エビぞりが2体出来上がった。
「息を吸いながらゆっくり両手両足を下ろす」
「……はい」
「この時、床に手やつま先がつかないようにして!」
「はい」
この背筋というのが結構キツイ。1回だけでもエビぞりを5秒キープするのはかなりしんどいのに、5回もしなければならない。元々腹筋・背筋の筋トレを取り入れた時、背筋は10回にしようとしていたのだが、実際やってみるとしんどすぎて楽器練習に支障が出てしまうので5回に減らした。
「うぅ……」
うめき声を上げながらチラ、と隣の後輩を見ると、至極真面目に背筋をしていた。
やっぱりちゃんと言うことを聞く、良い子だった。無表情なのが、何考えてるか分かんなくてちょっと怖いけど。
「……なんすか」
「ううん。なんでもない」
この後輩は鍛えがいと伸びしろがあるようだ。
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