プロローグ

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こんな所で会えるなんて運が良い。男は自身の運の良さに感謝した。 大きな噴水の周りには中庭の散策をしているらしき客人も幾人かおり、ちらちらとアリスを窺っているが、皆、声を掛けられず尻込みしている。 先手必勝と男は噴水を覗き込んでいる金糸の後ろ姿に声を掛けた。 「アリス様」 反応はない。聞こえなかっただろうかと、側に近付き再度呼び掛けると、やっとこちらに気付いた彼女が驚いたように目を見開いた。きょろきょろと辺りを見渡し、自分で自分を指差す。 「へ、あ、私…ですか?」 「ええ。驚かせてしまってすみません。お困りのように見えましたので、不躾にお声がけしてしまいました」 「あ、それはどうも…」 「何か落とされましたか? 屋敷の者を呼びましょう」 「え、だっ、大丈夫です。何も落としてません!」 アリスが慌てて頭を横に振る。そして、噴水から数歩距離を取る。あんなに熱心に見ていたのに、もう用はないらしい。 ならば好都合だと「それにしてもお久しぶりですね」と、話し掛ける。「え?」アリスがきょとんと不思議そうに瞳を瞬いた。 「わたしを覚えておいでではありませんか? ローザンヌ侯爵の晩餐会でお会いしたことがあるのですよ」 「え…えっと…」 アリスがおろおろと視線を彷徨わせる。 なんだろう? ほんの少し話しただけだが、以前、晩餐会で会った時の彼女とはまるで印象が違う。もっとたおやかで、それでいて芯のある令嬢のように見受けられたものだが…。 だが、寄る辺なく不安そうにしている彼女を前にして、訝しむ前に庇護欲が勝った。 「アリス様」男が思わず手を伸ばしそうになったところで、
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