0人が本棚に入れています
本棚に追加
両開きの扉が締まり、室内に静寂が充ちる。
そこへ、
「申し開きがあるなら今の内に聞こうか」
冷え冷えとした低声があがった。
先に室内に入っていた金髪の少女が細い肩をビクリと震わせ、なんとも気まずそうな表情を浮かべながら銀髪の男ー先程フィンと呼ばれていた男ーを振り向く。
「いやあ…このお屋敷広いね…」
あはは…と零される笑い声が虚しく響く。
男が腕を組み、冷たい目で少女を見据える。
その目が言っている。
それで?
「迷子になろうとしてなったわけじゃないんだよ。ワザとじゃないよ」
無言で更に促される。焦燥をありありと浮かべ少女が何とか弁明を続けた。
「そ、それに、迷ったら無闇に動くよりその場から動かない方が良いっていうし、でもじっとしてたら暇でさぁ」
「なるほど」
よかった。尋問から解放されたらしい。少女がほっと胸を撫で下ろすや否や、
「いつの間にか居なくなったご令嬢を無駄に広い屋敷中探し回って」
「…う」
「やっとのこと見付けたと思えば、当の本人は呑気に噴水とお戯れ遊ばして」
「…うっ」
「挙げ句、軟派男に声を掛けられているところを助け出したわけだが」
「…うぅっ!」
「俺に対して何か言うことは?」
「すみませんでした!」
少女が直角で腰を折る。見事な謝罪の姿勢であった。
最初のコメントを投稿しよう!