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深々と腰を折る姿に溜飲が下がったのか、男は怒涛の追撃を止めた。
「まぁいい。で、噴水を覗き込んで何をしていた?」
「水面に映った姿を見てたんだよ。本当にアリスなんだと思ったら不思議で」
「ああよかった。気でも触れたのかと思った」
「ねぇ失礼過ぎない!?」
「さっき無様に転び掛けていたのは?」
「無様ですみませんねえ! こっちはこんなに高いヒールの靴なんて履いたことないんだよ!」
慣れないヒールで思い切りよろけて地面と仲良しこよしになる前に助けてくれたのには感謝するが、そこまで呆れることはないだろう。
が、少女の文句などどこ吹く風で、男は頭が痛いと言わんばかりにこめかみを押さえ、これみよがしに大きなため息を吐いてみせた。
「さっきは立ち眩みで倒れそうになったと周りを誤魔化せただろうが、こんな有様ではアリス様の振りなどすぐにバレるぞ」
「あのね、私はただの女子高生なんだよ。それがいきなりアリスの振りなんてムリだよ」
「“ジョシコウセイ”が何だか知らないけど、やるやらないの問題じゃないんだよ。わかっていないようだけど、万一、お前がアリス様ではないとバレたら即刻牢獄行きの人体実験待ったなしだ」
「そっ、それは! そうだけど…」
威勢のよかった少女の気勢が削がれる。
「やるしか選択肢はない。お前も元いた世界へ還りたいだろう? ―――あきら」
言い聞かすように本当の名前を呼ばれ、
「うん…、わかってるよ」
少女ーーあきらはすっかりと大人しくなった。
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