言葉を使わない少女

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後半は上手く聞き取れなかった。少し不安になる。 「あ、ごめんね。コトハさん、少しだけ話を聞きたいんだけどいいかな?ここだと、誰かに聞かれそうだから、俺たち魔法士がいる管理塔まで来て欲しいんだけど」 『遅くなるとお父さんとお母さんに心配かけちゃうので・・・』 「あ、そっか・・・」 何故か、少し驚いたような反応をされた。両親が心配するのは当然だし、驚かれるようなことは何も言ってないはずだ。 「キミの両親には、ちゃんと伝えておくよ。それならいいかな?」 『わかりました』 両親に心配かけちゃうな。でも、断るわけにもいかないからしょうがない。 「じゃあ、俺に捕まって少しだけ目を閉じてくれるかい?もしかしたら酔うかもしれないからね」 言われた通り、エレインさんに捕まり目を閉じた。 「いくよ」 一瞬だけ浮遊感があったかと思えば、すぐに消えた。 「もう開けていいよ」 うっすら目を開ける。目の前に広がるのは先ほどの公園ではなく、全く知らない場所。 「っ!?」 驚きのあまり声が出そうになったが、なんとか抑える。 「魔法を見るのは初めてだよね。今のは転移魔法だよ。行ったことある場所ならどこへでも行けるんだ。そして、ここが管理塔だよ」 管理塔ってことは、魔法都市ってことなのだろう。よく見れば、あちらこちらで飛んでいる魔法士が沢山いる。元いた場所では、絶対に見られない光景。 「こっちだよ」 エレインさんに手招きされるまま、管理塔の中へ入った。入ると、さらに驚くことがあった。外からの見た目以上に、中が広いのである。 「魔法で異空間と繋げてあるんだ」 なんか色々教えてもらってるけど、大丈夫なのだろうか。ちょっと心配になる。 「ちょっと待ってて」 エレインさんはそういうと、受付らしき人のところへ向かった。なにやら話しているようだ。 「コトハさんこっち」 呼ばれたのでそちらに向かう。 「会議室がちょうど空いてるらしいから、そこで話を聞かせてもらうね」 私は、コクリと頷いた。どこまで話せばいいのやらと思いながら、エレインさんの後をついていく。だって、全て話せるわけがない。あんなこと誰も信じられるわけないじゃん。 「ここだよ」 そう言って扉を開けて、先に通してくれた。中は普通の会議室だ。 「適当に掛けて。何か飲むかい?コーヒー、緑茶、紅茶あるけど」 少し悩んで、緑茶を指差す。 「わかった」 テキパキとお茶の用意をしてくれた。私のお茶を置いてから、向かいの席に座る。 「さてと、単刀直入に聞くよ。エラントは誰が倒したんだい?」 真っ直ぐにこっちを見つめてくる。嘘を見逃すまいとするかのように。
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