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「だけど出産日当日、運悪くエラントが大量発生したんだ。焦燥感からかユリアナは体調を崩し、とても出産なんかできる状態じゃなかった。だけど、後戻りができるわけでもなく、医者の言う通り難産になった」
総司令官さんの表情はとても苦しそうだ。私の話のはずなのに、当の私はどこか他人事で聞いていた。
「私は、エラントの方に掛っきりでユリアナの所へ行けなかった。エラントが片付き次第、私は急いでユリアナの所へ向かった。近くまで来た時に、赤子の産声が聞こえて無事に産まれたことを悟ったんだ。部屋に入るなり、医者が赤子、コトハを抱えていて、ユリアナはぐったりしていた。私が来たことに気がついたユリアナは一言、『エラントは?』と聞いてきた。私は、『全て片付いたよ。よく頑張ったな』と言った。ユリアナは安心した顔をして、最期に『コトハを幸せにしてね』って言って、そのまま覚めることのない眠りへついたんだ」
それってつまり・・・。
「ユリアナは命をかけてコトハを産んでくれた。私は、ユリアナの分もコトハを愛すつもりだった。だけど、コトハに魔力はなく、こんな危ないところへ置いておくわけにいかなかった。私も総司令官になればコトハと一緒に入れる時間が少なくなる。だから、私は苦渋の選択で一番安全な場所に住んでいる親戚の家にコトハを預けた。そして、私が父親であることを明かさないでほしいと頼んだんだ。コトハには、なにも知らず幸せになって欲しかった。すまない」
頭が混乱した。知らないことを教えられ、受け入れられない現実を突きつけられた。どう反応すればいいのかわからない。
ハロは知っていたんだよね。なんで教えてくれなかったのだろうか。いや、もしかしたらハロなりの気遣いだったのかもしれない。だって、急に言われてもこんなの信じられるはずがない。お父さんとお母さんは本当の両親じゃなかったって。
「ごめんね。ボクも口止めされてたんだ。それに、コトハが気を遣っちゃうかなって思ったんだ」
聞きたいことや、気になることが山ほどある。だけど、どれから聞いていいものか分からず、言葉に詰まった。
「ハロは、頼まれて私のそばにいたの?」
まず一番最初に聞きたかったこと。ハロとはずっと友達だった。でも、友達だと思っていたのは私だけだったのだろうか。ただ頼まれたから私のそばにいたのか。
「ボクはコトハが生まれた時にリグールに会ったんだ。そもそもボクは誰の指図も受けない。コトハ以外はね」
どういうこと?ハロの言っていることがわからない。それは、私だけじゃなかったようで、みんなポカンとしていた。
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