言葉を使わない少女

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「ボクはね、コトハの魔力に惹かれたんだ。だから、コトハと一緒にいた」 私の魔力に・・・。 「ちょっと待ってくれ。ハロ、今魔力に惹かれたって言ったよな?」 総司令官さんは恐る恐る聞いている。 「そうだよ?もう出会う前から一目惚れだよ!コトハの魔力はとっても気持ちいいんだ!」 「なぜ教えてくれなかったんだ!!」 「ん?だって聞かれなかったから。ボクは、コトハと一緒ならどこでもよかったのさ」 魔力のあるなしで私のこれまでの人生がずいぶんと変わっていたということを考慮すれば、とても大事なことだと思う。まぁ、ハロらしいけど。 「だが、検査結果ではなしって・・・」 「先ほどの検査でも魔力なしの判定ではありました」 「そりゃそうさ。人間が作った人間の勝手に決めた範囲の魔力より遥かに大きな魔力なんだから」 は、ハロさん?それは一番大事なことなのでは・・・?魔力がないから変だって悩んでいたの知ってたよね?? 「コトハまで、そんな目で見ないでよ!だって仕方ないじゃん。魔力のこと話すと、リグールの話まですることになるじゃん!」 「だけど、これで君の言葉に関する疑問が解けたね。多分、君が発する言葉に魔力が籠っているから、君の言葉で奇跡を起こせるんだと思う」 奇跡?あんなのが?人を操ってしまうのが奇跡だっていうの?? 「・・・なわけない」 口が勝手に動いていた。だけど、それを止める術は私にはなかった。だって、怒りと悲しみに感情を支配されてしまったから。 「こんなのが奇跡なわけない!!!私の言葉は人を傷つけてしまうだけ!そんな力が、魔法が奇跡なわけないよ!!」 私はたくさんの人の心を支配してしまった。知らなかったとはいえ、許されることじゃない。何より、私自身が許せない! 「ならば、その力の正しい使い方を学べばいい。そして、傷つけてしまった人の分だけたくさんの人を救えばいい」 たくさんの人を救う?こんな制御できない力でどうやって?使い方なんてわかるわけない。 出来るわけないと思いつつも、少しだけ期待してしまいそうになる。もし、この力が制御できるなら。この力が役に立つのなら。 と、その時、ふわりと頭の中で映像が流れてきた。色んな人たちの笑顔。それが私に向けられていた。『ありがとう、お姉ちゃん』と言っている小さな子供。みんな口々に『ありがとう』、『命の恩人だ』と言っていた。 一度も外れたことのない、予言のようなもの。まるで、貴女ならできると言っているような、そんな予言。
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