言葉を使わない少女

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「むー。お・か・え・り!」 不満そうにもう一度言うその子に私はハッとした。 「あ、ごめん。ただいま」 この子は白竜のハロ。私の唯一の友達であり、唯一言葉を使える子だ。この子だけは私の言葉がただの言葉になってくれる。 「ずっと喋らなかったからつい」 「ボクと話すときは普通にしていいんだからね!」 「うん、わかってるよ」 物心つく前からずっと一緒にいるから家族とも言える存在。だけど、竜種が珍しくないわけじゃない。むしろ、本来の竜種は人間を敵対視していることが多いらしい。ハロ以外の竜種に会ったことがないから詳しくはわからないけど、竜種による被害もごく稀にあるらしいのだ。 「ねぇねぇ、おやつ食べよ!コトハがいない間ずっと退屈だったんだから」 「わ、わかったから引っ張らないで」 ハロは早く早くと言いながら私の袖を引く。手乗りサイズくらいなのに力がある。本来はもう少し大きいらしいけど、私は見たことがない。まぁ、このくらいが可愛いからいいかなって思ってる。 「ねぇ、この後なにする??」 「うーん・・・、先に宿題かなぁ。今日ちょっと多いんだ」 「えー!!ボク外行きたいよ〜。コトハと散歩行きたい!」 「散歩・・・は、ちょっと今日は無理だと思う。この後雨降るって言ってたし」 朝の天気予報では、夕方から雨が降るって言っていた。それが正しいと言うように外はどんより雲が覆っている。言葉を使えば晴れにはできるけど、私はそれをしたくない。 「明日帰ったら行こうか。明日は快晴だって言ってたから」 「・・・わかった。約束だからね!」 「うん」 ハロがいるから、私は救われている気がする。別にハロにそういう気があるわけではないと思うけど、私が勝手にそう思ってるだけだ。 「じゃあ、宿題終わったら何する??」 「うーん、ハロは何したい?」 「あ!じゃあ、コトハと本読む!!」 「え、ゲームって言われるかと思った」 「ボクだって、たまにはコトハに合わせるよ!」 「そっか。じゃあ宿題終わったら読もうか。ハロ、何読みたいか考えておいてね」 「うん、任せておいて!」 私は鞄から教科書とノートを取り出した。今日の宿題は数学と英語だ。どちらも明日授業があるので、それまでにやらなければいけない。古文の宿題も出たけど、それは明日はないから今日はやらなくてもいいだろう。まぁ、忘れないように、机にメモを貼り付けておこう。
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