言葉を使わない少女

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ハロが選んだ本は、ディアス神話。ここディアス帝国の遠い昔の話。今はもう神様くらいしか知らないようなお話。 出てくるのは3匹の竜と、最初の人間たち。人間は、長い時間を生きている竜が退屈凌ぎで創ったとされている。だから色々な種類の人間を創った。 3匹の竜は聖竜、最初の人間たちは始祖と呼ばれている。この物語はそこから、始祖が国を作るまでの話が書かれている。 私は今も昔も、この話が大好きだ。この国は子供の頃からこの話を聞かされ耳タコである。でも、嫌いな人はいない。だって、この国が生まれた起源なのだから。 「コトハは、聖竜ってどんな竜だと思う?」 「え、うーん・・・。ハロみたいに綺麗な竜だと思うかな。なんか神々しい感じ・・・?」 「ボクって神々しい??」 「ハロは綺麗な竜だよ」 「えへへ〜」 ハロは、自分の綺麗な鱗が自慢だ。泥などで汚れようものならば、その日のハロの機嫌はマイナスまで真っ逆さまだ。それなのに、外で遊ぶことが好きだからちょっと困る。まぁ、可愛いからいいけどね。あと、私以外に触れられるのも嫌らしい。ここまで来ると最早潔癖症である。いや、でも外で遊ぶの好きだし、ただの自分オンリーの綺麗好きか・・・? 深く考えようとしてやめた。結局行き着く結論は、どんな悩みも一緒だからだ。【可愛いからいいや】。それ以外の結論には至らない。 「コトハ?どうしたの?」 「いや、ハロは可愛いなぁって」 「い、いきなり何!?いや、ボクは可愛いけど!」 あ、可愛いは認めるのね。まぁ可愛いもんね。ハロって、可愛く着飾らせても可愛いとは思うけど、なんというか、結局はそのままのハロが一番可愛いって思うんだよね。 「コトハー!ハロちゃーん!ご飯できたよー!」 下の階からお母さんの声が聞こえてきた。 「ご飯できたって。行こっか」 「うん!」 リビングへ向かうと、お父さんももう帰っていてテレビを見ていた。 「コトハ、ただいま」 お父さんは、私に気がつくと声をかけた。私はにっこり微笑む。 お父さんは、お母さんほどあからさまではないけども、私のことを考えてくれている。いい家族に恵まれて、とても幸せだ。 食事中の会話はほとんどない。あっても、私がイエスかノーで反応できるものだけだ。だけど、食事後は、みんなでリビングにいることが多い。会話だったり、みんなでテレビ見たり。家族団欒を楽しんでいる。 時々私の撮影会が開催されることもある。お父さんもお母さんも写真を撮るのが好きなのか、私のアルバムが沢山ある。
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