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頬に触れた感触に意識が浮上する。
深い眠りに落ちていた僕は、強烈な睡魔に負けそうになりながらも目を擦った。
「んん……? クロ……?」
むにゃむにゃと呂律の回らない口調で、友人の名を呼ぶ。同居を始めてから早数日、クロは時々寝汚い僕を起こしてくれることがあった。
今は何時だろうか。こうして起こしてくるということは、もう起床時間を過ぎてしまっているのだろうか。そう思いながら無理やり目を開けた僕は、視界に映ったものを見て一気に目が覚める。
僕の胸元に乗って頬を触っていたのは、クロではなく、赤ん坊の人形だったのだ。
「は、」
間抜けな声を漏らした僕に、人形は歯を剥き出しにして笑いかけて。
僕はたまらず、朝から絶叫を響かせるのだった。
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