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クロと同居を始めてから、一つわかったことがある。
それは、予想以上に彼の趣味であるガラクタ収集が酷いということだ。
不吉な噂のあるものは当たり前。中には壊れてしまって使いようのない物まで、所狭しと並べている。どれもこれも、訳ありなせいで人に捨てられた不用品ばかりなのだ。しかもそれを商品として売っているのだから、この友人の考えていることは本当によくわからない。
いや、それはまだいい。人の趣味だからとやかく言うつもりはない。だけどせめて管理はちゃんとしてほしいと、僕は朝からぐったりしながらクロに訴えかけた。
「ごめんごめん。普段は大人しい子なんだけど、家族が増えて嬉しかったみたいだね」
クロは僕の訴えをさらりと流して、ボロボロの人形を抱える。ちなみにそれはなんだと訊けば、ミルク飲み人形だと答えが返ってきた。
「ミルク飲み人形?」
「要するに、お世話をして遊ぶおもちゃのこと。でも、まるで生きているみたいにどこまでもついてくるからって捨てられたんだ。それを僕が引き取ったってわけ」
クロの説明にゾッとする。動く人形なんて冗談じゃないと思い距離を取れば、彼は不満そうに唇を尖らせた。
「そんなに邪険にしなくたっていいのに」
「邪険にもするよ。君はどうしてそう危ないものばかり集めるんだ」
「だって可哀想じゃない。厄介もののレッテルを貼られて捨てられてしまうなんてさ。少なくとも、一度は可愛がってくれたはずなのにね」
ねえ?と優しく声をかけて、クロは人形の頭を撫でる。彼の言うことも正しいかもしれないが、残念ながら僕はクロのように同情してやることができそうになかった。
僕が恨みがましく人形を睨んでいると、そんなことより、とクロがこちらを向く。
「そろそろ店を開こうか。今日はお互い授業がないし、ゆっくり仕事ができるよ」
クロはなにやらご機嫌な様子で、人形を大事そうに抱えたまま一階の店舗へと向かう。
僕は朝から最悪な気分で、友人の後を追って階段を下りるのだった。
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