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 この人と一緒になれたら、と私は空想せずにはいられない。  彼はいままで私の周りにいなかったタイプの人だった。落ち着いていて、気取らない。見かけは端正で服装もしっかりしているけれど、嫌味がない。いや、それよりも何よりも、知ったかぶりをしない、知識をひけらかそうとしない。これまで私の周りの男たちはそんな連中ばかりだった。だから私は彼らを見下していた。軽くあしらってきた。けれど、ジェームズにはそんな構え方をせずに済む。いわば自然体でつき合えるのだ。  彼に恋をしたのか。それは自分には分からなかった。ただ、彼とともになら、毎日を楽しく穏やかに過ごせそうな気がしていた。  けれど、ヒースクリフ。  私が彼を見捨てる理由はたくさんある。彼はずるい。私を「愛している」「すばらしい」とほめそやすけれど、その言葉をそのまま信じることは私にはできなかった。彼はたまたま、醜い自分でも受け入れてくれる女性を見つけただけに過ぎないのではないか。それも、私が多くの男に飽き飽きしているからというだけのことなのに、彼はずうずうしくも自分が愛されていると信じているのだ。  私は「ウタマロ」も「嵐が丘」もそんなに興味はない。  それに、最初は面白がってはいたけれど、最近では彼に「キャシー」と呼ばれることにもうんざりしかけている。  私はキャシーじゃない、ソフィアよ。  その名で呼んでくれるジェームズ、特別の意味をこめて私を理解してくれるジェームズはもう人生で二度とは会えないかもしれない人だった。
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