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18
「どうして」
私は言う。
「どうしてわかったの」
私の裏側の私を。
「ど、どうしてって、ぼ、僕は、感じたままを描いただけ、なんだ」
ヒースクリフの目は相変わらず何の邪気もなかった。
「私はソフィアよ」
私は言う。
「し、知ってるよ。で、でも、僕にとっては、どうしても君は……キャシーなんだ」
ヒースクリフは彼の本名ではない。彼がその筆名を用いたのは意味のないものではなかったのだ。彼の、吃音に隠された激情。己の醜さへのコンプレックス。どんなに歪んでいても一途な愛情。
でも、目の前にいるヒースクリフは、歪みさえない一途さを見せていた。
私は、この絵を完成させねばならないと思った。彼のために、そして私自身のために。
そう、私はミューズになる決心をしたのだった。
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