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 アーニャは私を責めた。あそこまでジェームズをその気にさせておいて、あっさりとフルなんて。彼は傷ついている。  彼女の言うとおりだった。そして私はジェームズもまた愛していた。恋などしたこともなかった私が、初めて女として心惹かれ引き寄せられた男性。彼のような人はもう二度と現れないかもしれない。  それを思うと胸がつぶれるようだ。  しかし、それでも私は、ヒースクリフを投げ出すわけにはいかない。  私は毎日彼のアパートメントに通い詰めた。泊ることも多くなった。  彼は異様なほどの集中力を発揮して、私を描いた。  コンテストの締め切りはもう目前だった。
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